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まずはお礼を。

うああ庵様、リンクありがとうございます。
Library様、晒し上げありがとうございます。

Library様からいらした方へのご報告ですが、件のエビは翌日野菜との塩あんかけ炒めにして無事に平らげました。




そしてハルヒSSの続きです。

 やたらと重厚な板が張られた廊下は、男2人でのし歩こうと軋みすら立てない。静かすぎて不気味な程だ。そのせいか、先月の謎の館での体験がふと脳裏を過ぎ、もしかしたらこのまま食堂にたどり着けないんじゃないかと、妙な不安に駆られる。
「そんなにびくびくしなくても大丈夫ですよ、もうすぐです」
 振り返った古泉が見透かしたような言葉をかけてきた。何か言い返してやろうと口を開いた時、確かに人のざわめきのような音がかすかに聞こえてきて、胸につかえていた吐息がふっと抜けた。
 俺は古泉を早足で追い抜かし、音の方へと急ぐ。渡り廊下を渡って、曲がり角を右へ。音が大きくなる。廊下の突き当たりが見えてきた。その左に面した襖から、漏れるハルヒの声、鶴屋さんと妹の笑い声。あそこだ。磨き上げられた廊下に足を取られかけながら襖に手を伸ばし、勢いよく襖を開ける。部屋の中央にはでかい座卓が据えられており、その周囲ではにぎやかな朝食の真っ最中だった
「おっそおーい!!あんたの分のシャケはもうあたしの胃の中よ!」
 制服姿のハルヒは俺の姿を認めるなり、高らかにつまみ食い完了を宣言した。箸で俺を指すな、口に物を入れたまましゃべるな、茶碗持ったまま立ち上がるな、行儀が悪いにも程がある。
「ううう……キョンくぅーん」
 今にも泣き出しそうな顔でぷるぷる震えながら俺を見上げる朝比奈さん。目の前に並べられた朝食には箸がつけられた形跡がない。この人もこの困った現象に気付いているようだ。
「……」
 長門はてんこ盛りになっている白米を規則正しく口へと運びながら、ちらりとこちらに視線を投げた。相変わらずの無表情だが、こいつが今回の異常に気付いていないってことはないだろう。
「キョンくん、早くこないとお米以外全部なくなっちゃうよー」
 純和風の食事の合間に美味そうに牛乳を飲む妹。なぜ炊きたての米を食いながら牛乳なんぞ飲めるのだろうか。
「だいじょーぶっ、まだまだおかわりは残ってるよっ!さっ、早くこっちおいでっ」
 既に朝食を食べ終わり、薫り高いほうじ茶をすすっていた鶴屋さんが手招きする。追いついた古泉と共に、手招きに従って座卓の空いた場所に腰を下ろす。それと同時に部屋の奥の襖が開き、和服に割烹着姿の女性が黒塗りのお盆を持って現れた。
「もう、二人とものんびりしすぎですよ。お茶漬けにしてありますから、おかずと一緒に急いでお上がりなさい」
 そう言いながら俺と古泉の前に小振りの丼を置いたのは、謎のメイドとしておなじみの森園生その人だった。いつものメイド姿じゃないからすぐには分からなかった。ん?森さんがいるということは。
「お断りしておきますが、今回の件は『機関』とは無関係ですから」
 隣に座っている古泉が顔を寄せてきて低くささやいた。分かったから離れろ、朝っぱらから気色悪い。
「あ、お茶漬けもいいわね!おかーさん、あたしにもお茶漬けちょうだい!」
 ハルヒ、お前は人のおかずまで掠めておきながら、まだ食うってのか?
「まだ食べるの?太ってもしりませんよ」
「大丈夫よ、朝ご飯をしっかり食べた方が太らないって言うじゃない」
「はいはい分かりました」
 呆れたようなため息をついて、森さんはさっき現れた襖の奥へと消えていった。あの先に台所があるようだ。
 ん?俺はなにか重大な見落としをしてる気がするんだが、気のせいか?
「おい」
 俺は茶漬けの丼を持ち上げて口元を隠しつつ、ハルヒに聞こえないような小声で古泉を呼んだ。
「なんでしょう?」
 同じように口元を隠した古泉の声も自然と小さくなる。
「ハルヒは今誰に話しかけてた?」
「森さんですね」
「で、あいつは森さんをなんて呼んだ?」
「『お母さん』と言ってましたね」
「あいつ、まだ寝ぼけてんのか?」
「あれだけはきはきと寝ぼけられる人はそういないと思いますが」
 戻ってきた森さんがお茶漬けを差し出すが早いか、ハルヒは箸で全体をざっくりかき回して猛スピードでかき込み始めた。お前に取ってお茶漬けとは食べ物ではなく飲み物なんだな。確かに、こんな勢いで飯を平らげる寝ぼけ野郎がいたら、たまったもんじゃない。
 ということは、だ。
「これが今回の改変の結果、ですよ」
「これってどれだよ。俺たち全員が鶴屋家のご厄介になってることか?森さんが割烹着姿でハルヒのお母さんになったってことがか?」
「その程度で済めば良かったのですが」
 古泉は眉をひそめてため息を吐いた。
「ごっちそーさまー!」
 叩き付けるように丼を座卓に置いたハルヒは、まだ丼を口元でホールドしたままの俺たちをにらみつける。
「お茶漬け1杯片付けるのにどれだけ時間かけてるのよ?おにーちゃん、キョン、さっさと食べちゃいなさいよ、あたしたちまで遅刻するでしょ!」
 お……にいちゃん?
 ハルヒは、俺の事はキョンと呼んだ。なら、『おにーちゃん』などという恐ろしい単語で呼ばれたのは。
「ああ、すいません」
 凍り付いたように動かない首を無理矢理回して、恐る恐る古泉の方をうかがう。いつもの優等生スマイルが、ほんの少しだけ引きつっているのを俺は見逃さなかった。
「先に行って待ってるからね!早く来なさいよ!!」
 座卓を叩いて立ち上がると、ハルヒは震えっぱなしの朝比奈さんの腕を捕まえて立たせる。
「ほら、行くわよみくるちゃん!」
「へっ……あ、でも私」
 半ばハルヒに引きずられながら、朝比奈さんはすがるような視線を俺に向ける。どうしたものかとためらっているうちに、お茶を飲み干した鶴屋さんも立ち上がった。
「じゃああたしも表で待ってるよっ。さっ、ハルにゃん、助太刀するっさ!」
 言うが早いか、鶴屋さんは朝比奈さんの空いた方の腕をがっちり抱える。
「あのっ……自分で歩けますから!」
「みくるお姉ちゃんばっかりずるいー、あたしもあたしもー!」
 玄関に向かって動き出した朝比奈さんの両足首を、妹が体育座りの姿勢でむんずと掴んだ。これは流石にまずい。妹を引きはがそうと慌てて立ち上がったが、時既に遅し。ハルヒと鶴屋さんは短距離走のオリンピック選手もかくや、という見事なダッシュで駆け出した。
「いやあぁぁー、やめてえええぇぇー!」
 捕獲されたリトルグレイよろしく両腕を取られ、足には小学5年生女子の重りをつけられ、猛スピードで後ろ向きに引きずられて行く朝比奈さんの切ない悲鳴は、妹の心底楽しそうな笑い声と不協和音を奏でながら、恐ろしい速さで遠ざかって行った。
「いやはや、まるで拷問ですね」
 4人を見送った古泉は、場を取り繕うように笑いながら物騒な例えを引く。
「重石付きの屋内引き回し……確かに立派な拷問だな」
「引き回し刑はあのように人を引きずる刑ではない。馬に罪人を乗せて街路をねり歩き見せ物とする、死罪以上の罪人に行われた付加刑」
 長門、そんなのはどうでも良いから。まず、朝比奈さんは罪人なんかじゃないし。
「朝比奈みくるに加えられた行為に比較的近いのは、西部劇などで良く見られる両手首に繋いだロープを馬で引きずるもの。だがあれは法的に定められた刑罰ではなく、単なる私刑」
 だからそれはどうでも良いから。むしろ俺は全てがどうでも良くなってきた、何も考えたくない。森さんとハルヒが親子になろうが、うちの妹が朝比奈さんを姉と呼ぼうが、知ったこっちゃねーや。座卓の上に丼と箸を投げ出し、辺り構わず盛大にため息を吐く。例の口癖が口をついて出そうになったその時、森さんの声音にくるまれた最強最悪の爆弾発言が、俺の頭上から無慈悲に投下された。
「あなたたちも早くお行きなさい、兄妹7人全員で遅刻なんて笑い話にもなりませんよ」
 それだけ言うと、目の前に散乱する食器をお盆に積み上げ、森さんは台所へと消えた。兄妹7人……ほほう、7人兄妹ね。核家族が当たり前の現代においてはずいぶんと大家族だな。あれだけ騒々しかったのもうなずけるってもんだ。
 で、俺と妹以外に、誰が誰と兄妹だって?
 森さんは『お母さん』らしいので頭数から外すとしてだな。さっきまで一緒に飯を食っていたのは何人だ?
 ハルヒ、朝比奈さん、長門、鶴屋さん、妹、古泉、俺。
 お、丁度7人だな。
「…………なんですと?」
 ショック性の金縛りに遭った俺は視線だけで古泉を見やるが、古泉はなぜか俺と目を合わせようとしない。仕方ないので今度は恐る恐る長門の方へ視線を流す。容赦なく俺の目を見返してくる長門が語る、俺たちの現状。
「涼宮ハルヒを原因とする情報改変により、現在私達は全員兄妹ということになっている。母親は森園生、父親は多丸圭一」
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黒とピンクのアポロチョコカラーリングが好きだと言い続けてはいたが、つい最近になって、正確にはアポロチョコはダークブラウンとピンクだと気付いて絶望した。
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